延慶本　平家物語　書き下し版（漢字ひらがな交じり）　更新日　２０２０．１０．２７．火

平家物語　一〜十一　ＪＴＥＸＴにて公開中　延慶本平家物語読み下し・一〜十一 　

平家物語　十二より　目録、一

平家物語　十二　（第六末）

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Ｂ２４５４▼Ｐ３４９３

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　当巻の内、歌十八首、之在り。

Ｂ２４５５Ｐ３４９５（一オ）

一　　大地振オビタタシキ事　　　　二　　天台山七宝ノ塔婆／の￥事

三　　建礼門院吉田ニ御坐事　　　　　　　東大寺供養之事

四　　源氏六人ニ勧賞行は／るる￥事　　　　五　　平家ノ生虜共流さ／るる￥事

六　　平大納言時忠之事　　　　　　七　　建礼門院小原ヘ移り給ふ￥事

　　　阿波民部并中納言忠快之事　　八　　判官与二位殿不快事

九　　土佐房昌俊判官の許へ寄事　十　　参河守範頼被誅給ふ￥事

十一　原田大夫高直被誅事　　　　十二　九郎判官都ヲ落事

十三　義経可追討之由被下院宣事　十四　諸国ニ守護地頭ヲ被置事

十五　吉田大納言経房卿事　　　　十六　平家ノ子孫多ク被レ失ハ事

十七　六代御前被召取事　　　　　十八　六代御前関東へ下給ふ￥事　Ｐ３４９６

Ｐ３４９６（一ウ）

十九　六代御前被免給ふ￥事　　　　　　廿　　六代御前大学寺ヘヲハスル事

廿一　斉藤五長谷寺ヘ尋行事　　　廿二　十郎蔵人行家被搦事　付人々被解官事

廿三　六代御前高野熊野ヘ詣給ふ￥事　廿四　建礼門院之事

廿五　法皇小原ヘ御幸成ル事　　　廿六　建礼門院法性寺ニテ終給ふ￥事

廿七　頼朝右大将ニ成給ふ￥事　　　　廿八　薩摩平六家長被誅事

廿九　越中次郎兵衛盛次被誅事　　三十　上総悪七兵衛景清干死事

卅一　伊賀大夫知忠被誅事　　　　卅二　小松侍従忠房被誅給ふ￥事

卅三　土佐守宗実死給ふ￥事　　　　　卅四　阿波守宗親発道心事

卅五　肥後守貞能預観音利生事　　卅六　文学流罪−せ／らるる￥事　付文学死去事　隠岐院事

卅七　六代御前被誅給ふ￥事　　　　　卅八　法皇崩御之事

卅九　右大将頼朝果報目出事

Ｂ２４５７

Ｐ３４９７（二オ）　平家物語第六末

一　〔大地振おびたたしき事〕　文治元年七月ニ平氏残り無く滅び／テ西国静まり／ヌ。国ハ国司ニ随ひ、庄ハ領家の進退也。上下安堵して思ひ／シ程ニ、九日の午の時計ニ大地振おビタタシクシテ良久シ。畏シ／なんどモナノメナラズ。赤懸の内、白川ノ辺、六勝寺、九重の塔ヨリ始め／テ、或い／は傾き倒レ或い／は破れ−崩ル。在々所々ノ神社仏閣、皇居人家、一宇モ全キハ無シ。鳴る声／は雷（いかづち）／ノ如し、揚がる塵ハ煙ニ同ジ。天闇く／シテ日ノ光モ見え／ず。地響き／テ巌谷ニ躅き−入レリ。老少共ニ魂ヲケシ、鳥獣モ悉ク心ヲ迷はス。「コハ何（いか）ニシツル事ゾ」トオメキ叫ブ。打ち−殺サルル者モアリ、圧し損ゼラルル者モアリ。近国遠国モ又此（かく）/の/如（ごと）し。山崩れ／テＰ３４９８（二ウ）河ヲ埋ミ、海漂ひ／テ礒ヲ浸ス。洪水漲り−来たらば、岡ニ登り／テモ助リナン。猛火燃え近付かば、河ヲ隔て／テモ去り／ヌべシ。只悲しカリケルハ大地振ナリケリ。鳥にあらざれば空（そら）/をも翔（か）けらず、龍にあらざれば雲（くも）にも￥入ら／ず。心憂し／トモオロカナリ。主上ハ鳳輦ニタテマツリテ、池ノ汀ニ渡らセ給フ。法皇ハ其の程今熊野ニ御寵り有り／けルガ、折シモ御花参らせサセ給ひ／けルニ、屋共多ク振り倒シ、人アマタ打ち−殺サレテ、触穢（しよくゑ）サへ出で来ニケレバ、六条殿ヘ還御成り／に／ケリ。天文博士共馳せ−参り／て騒ぎ-申ス。占文軽からず。今夜ハ南庭ニ幄（あく）ヲ立て/テ、主上渡ら/セ給フ。諸宮諸院ノ御所共皆倒レニケル上、猶隙無く振るひ/ケレバ、或い／は御車ニ召し、或い／は御輿ニ奉りテゾ渡ら/セ給ひ／けル。種々ノ御評定、様々ノ御祈り始まル。「今夜ノＰ３４９９（三オ）子丑ノ時ニハ大地打返すべしト御占有り」ナンド云ひ／テ、上下家ノ中ニ居タルハ一人モナシ。遣戸障子ヲ立て/テ只外ニノミゾ有り／けル。天/の響き、地ノ動ズル度ニハ、只今ゾ死ぬルトテ、手ヲ取り-組み/テ高念仏ヲ唱ヘケレバ、所々ノ声々オビタタシ。百年ニ一年足らざる九十九髪（ツクモガミ）共モ、「未だかかル事覚え／ず」トゾ申し／ケル。「世ノ滅スル／なんど云ふ￥事ハ、経論聖教ノ説相ヲ案ズルニ、サスガ今日明日トハ思（おも）はざりツル物ヲ」トテ、大人（おトナ）共モ泣き/ケレバ、少（をさ）なき者共モ是ヲ聞き／テ、オメキ叫ブ声々オビタタシ。文徳天皇ノ御宇、斉衡三年三月、前（さき）の朱雀院/の御時、天慶元年四月ニかかル地振アリケリ。天慶ニハ主上御殿ヲ去り／テ、常寧殿ノ前ニ五丈ノ幄ヲ立て/テ渡ら/セ給ひ／けリ。四月十五日/より八月ニ至（いた）るまで、隙無く振ひＰ３５００（三ウ）ケレバ、上下家ノ中ニ安堵セザリケリトゾ承ル。されども其ハ見ヌ事ナレバ、如何有り／けン。今度の事ハ是ヨリ後モ￥類有る／べし／トモ覚え／ず。平家ノ怨霊ニテ￥世／の−中／ノ失（う）すべき由、申し-アヘリ。十善帝王ハ都ヲ責め落され/テ、御身ヲ海中ニ沈メ、大臣公卿ハ大路ヲ渡サレテ、首ヲ獄門ニ懸け/ラレヌ。異国ニハ其/の例モヤ有る/ラム、本朝ニハ未だ聞かざる事也。是程ナラヌ事ダニモ、怨霊ハ昔モ今モ怖ろシキ事ナレバ、世モ末ダシヅマラズ。云何ガアラムズラムトゾ怖れ−合（あ）ヒケル。

二　〔天台山七宝の塔婆の事〕

平家物語

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