義経記 諸本の一部 2004.05.11.火

 

十二行木活字丹緑本 東洋文庫 所蔵 岩波古典文学大系の底本 下記は、原本通りに改行。

\義経記巻第一(だいいち)

\よしとも\みやこおち/の\事(こと) S0101

\ほんてう/の\むかし/を\たづぬれ/ば、\たむら、\としひと、\まさ

かど、\すみとも、\ほうしやう、\らいくわう、\かん/の\はんくわい、\    

ちやうりやう/は\ぶよう/と\いへ/ども\名/を/のみ\きき/て\目

/に/は\み/ず。\ま/の-あたり/に\げい/を\世/に\ほどこし、\万事

/の、\め/を\おどろかし\給(たま)ひ/し/は、\しもつけ/の-さま/の-かみ-

よしとも/の\すゑ/の\子、\九郎-よしつね/とて、\わが=てう/に

\ならび-なき\めいしやうぐん/にて\おはし/けり。\ちゝ\よし

とも/は\へいぢ-元年+十二月+二十七日/に\ゑもん/の-かみ

\ふぢはら/の-のぶより/の-きやう/に\くみし/て、\京/の\いく

/に\うち-まけ/ぬ。\ぢうだい/の\らうどう-ども\みな\うた/れ

 

十一行木活字本 小汀利得氏 所蔵 原本通りに改行。

\義経記巻第一(だいいち)

\よしとも\みやこおち/の\事(こと) S0101

\本朝(ほんてう)/の\むかし/を\たづぬれ/ば、\たむら、\としひと、\まさ

かど、\すみとも、\ほうしやう、\らいくわう、\かん/の\はん

くわい、\ちやうりやう/は\ぶよう/と\いへ/ども\名/を/のみ

\きき/て\め/に/は\み/ず。\ま/の-あたり/に\げい/を\世/に

\ほどこし、\万事/の、\め/を\おどろかし\給(たま)ひ/し/は、\下野(しもつけ)

/の-さま/の-かみ-よしとも/の\すゑ/の\子、\源-九らう-よし

つね/とて、\わが=てう/に\ならび-なき\めいしやうぐん

/にて\おはし/けり。\ちゝ\よしとも/は\平治(へいぢ)-元年+十二月+

廿七日/に\衛門(ゑもん)/の-かみ藤原(ふぢはら/の)-信頼卿(のぶより/の-きやう)/に\くみし/て、\

 

芳野本 原本通りに改行。

\義経記巻第一(だいいち)

  一 \よしとも\都落(みやこおち)/の\事(こと) S0101

\本朝(ほんてう)/の\むかし/を\尋(たづぬ)れ/ば、\たむら、\としひと、\まさ

門(かど)、\すみとも、\ほうしやう、\頼光(らいくわう)、\かん/の\はんくわい、\

長良(ちやうりやう)/は\ぶよう/と\いへ/ども\名/を/のみ\聞(き)き/て\

目(め)/に/は\み/ず。\ま/の-あたり/に\げい/を\世/に

\ほどこし、\万事/の、\目(め)/を\おどろかし\給(たま)ひ/し/は、\

下野(しもつけ)/の-さま/の-かみ-よしとも/の\すゑ/の\子、\源-九郎-

義経(よしつね)/とて、\我(わが)=朝(てう)/に\ならび-なき\名将軍(めいしやうぐん)/にて

\おはし/けり。\父(ちち)\よしとも/は\平治(へいぢ)-元年+十二月+

廿七日/に\衛門(ゑもん)/の-かみ藤原(ふぢはら)/の-信頼卿(のぶより/の-きやう)/に\くみし/て、\

 

日本古典全集

P001

\義経記巻第一(だいいち)

  一 \義朝(よしとも)\都落(みやこおち)/の\事(こと) S0101

\本朝(ほんてう)/の\むかし/を\たづぬれ/ば、\田村(たむら)、\利仁(としひと)、\将門(まさかど)、\純友(すみとも)、\保昌(ほうしやう)、\頼光(らいくわう)、\漢(かん)/の\樊(はんくわい)、\張良(ちやうりやう)/は\武勇(ぶよう)/と\いへ/ども\名/を/のみ\聞(き)き

/て\目/に/は\見(み)/ず。\目(ま)/の-あたり/に\芸(げい)/を\世/に\ほどこし、\万事/の、\目(め)/を\おどろかし\給(たま)ひ/し/は、\下野(しもつけ)/の-左馬頭(さま/の-かみ)-義朝(よしとも)/の\すゑ/の\子、\源-

九郎-義経(よしつね)/とて、\我(わが)=朝(てう)/に\ならび-なき\名将軍(めいしやうぐん)/にて\おはし/けり。\父(ちち)\義朝(よしとも)/は\平治(へいぢ)-元年+二月+二十七日/に\衛門督(ゑもん/の-かみ)\藤原(ふぢはら/の)-信頼卿(のぶより/の-きやう)/に\く

みし/て、\京/の\軍(いくさ)/に\うち-負(ま)け/ぬ。\重代(ぢゆうだい)/の\郎等(らうどう)-ども\みな\討(う)た/れ/しか/ば、\そ/の\勢(せい)\二十-余騎(よき)/に\なり/て、\東国/の\かた/へ/ぞ\落(お)ち\給(たま)ひ/ける。\

 

義経記(国民文庫) 巻一 2004.05.11.火

凡例

底本:国民文庫「義経記」 明治44年 を諸本にて校訂しました。

底本は、章段の始めに漢数字で一〜 とありますが、その代わりに章段名の後にS+巻(上2桁)+章段(下2桁)で表記しました。

参考としまして岩波大系本のページ数を表示しました。P+ページ数(3桁)。前後で改行しています。

語句を他本を参照して改めた箇所があります。

仮名を漢字に改め、漢字の表記を改めた箇所が有ります。

漢字を仮名に改めたものも有ります。

 

\義経記

P035

\義経記巻第一(だいいち)目録

\義朝(よしとも)\都落(みやこおち)/の\事(こと)

\常盤(ときは)\都落(みやこおち)/の\事(こと)

\牛若(うしわか)\鞍馬入(くらまいり)/の\事(こと)

\聖門(しやうもん)-坊(ばう)/の\事(こと)

\牛若(うしわか)\貴船詣(きふねまうで)/の\事(こと)

\吉次(きちじ)/が\奥州物語(あうしうものがたり)/の\事(こと)

\遮那王殿(しやなわう-どの)\鞍馬出(くらまいで)/の\事(こと)

P036

\義経記巻第一(だいいち)\

義朝(よしとも)\都落(みやこおち)/の\事(こと) S0101

\本朝(ほんてう)/の\昔(むかし)/を\尋(たづ)ぬれ/ば、\田村(たむら)、\利仁(としひと)、\将門(まさかど)、\純友(すみとも)、\保昌(ほうしやう)、\頼光(らいくわう)、\漢(かん)/の\樊(はんくわい)、\張良(ちやうりやう)/は\武勇(ぶよう)/と\雖(いへ/ど)も\名/を/のみ\聞(き)き/て\目(め)/に/は\見(み)/ず。\目(ま)/の-あたり/に\芸(げい)/を\世/に\ほどこし、\万事/の、\目(め)/を\驚(おどろ)かし\給(たま)ひ/し/は、\下野(しもつけ)/の-左馬頭(さま/の-かみ)-義朝(よしとも)/の\末(すゑ)/の\子、\九郎-義経(よしつね)/とて、\我(わ)/が=朝(てう)/に\ならび-なき\名将軍(めいしやうぐん)/にて\おはし/けり。\父(ちち)\義朝(よしとも)/は\平治(へいぢ)-元年+十二月+二十七日/に\衛門督(ゑもん/の-かみ)=藤原(ふぢはら/の)-信頼卿(のぶより/の-きやう)/に\与(くみ)し/て、\京/の\軍(いくさ)/に\打(う)ち-負(ま)け/ぬ。\重代(ぢゆうだい)/の\郎等(らうどう)-共(ども)\皆(みな)\討(う)た/れ/しか/ば、\其(そ)/の\勢(せい)\二十-余騎(よき)/に\なり/て、\東国/の\方(かた)/へ/ぞ\落(お)ち\給(たま)ひ/ける。\成人(せいじん)/の\子供(こ-ども)/を/ば\引(ひ)き-具(ぐ)し/て、\幼(をさな)ひ-達(たち)/を/ば\都(みやこ)/に\棄(す)て/て/ぞ\落(お)ち/られ/ける。\嫡子(ちやくし)\鎌倉(かまくら)/の=悪源太(あくげんだ)-義平(よしひら)、\次男(じなん)\中宮(ちゆうぐう/の)-大夫進(だいぶ/の-しん)=朝長(ともなが)\十六、\三男(さんなん)\右兵衛佐(うひやうゑ/の-すけ)-頼朝(よりとも)\十二/に\なる。\悪源太(あくげんだ)/を/ば\北国/の\勢/を\具せよ/とて\越前(ゑちぜん)/へ\下(くだ)す。\それ/も\叶(かな)は/ざる/に/や、\近江(あふみ)/の\石山寺(いしやまでら)/に\篭(こも)り/ける/を、\平家(へいけ)\聞(き)き-つけ、\妹尾(せのを)、\難波(なんば)/を\差(さ)し-遣(つか)はし

P037

/て、\都(みやこ)/へ\上(のぼ)り、\六条河原(ろくでうかはら)/にて\斬(き)ら/れ/けり。\弟(おとと)/の\朝長(ともなが)/も\山賊(せんぞく)/が\射(い)/ける\矢/に\弓手(ゆんで)/の\膝口(ひざぐち)/を\射(い)/られ/て、\美濃国(みの/の-くに)\青墓(あふはか)/と\言(い)ふ\宿(しゆく)/にて\死(し)に/けり。\其(そ)/の=外(ほか)\子供(こ-ども)\方々(はうばう)/に\数多(あまた)\有(あ)り/けり。\尾張国(をはり/の-くに)\熱田(あつた)/の=大宮司(だいぐうじ)/の\娘(むすめ)/の\腹(はら)/に/も\一人\有(あ)り/けり。\遠江国(とほたうみ/の-くに)\蒲(かば)/と\言(い)ふ\所(ところ)/にて\成人(せいじん)=し\給(たま)ひ/て、\蒲(かば)/の-御曹司(おんざうし)/と/ぞ\申(まう)し/ける。\後(のち)/に/は\三河守(みかは/の-かみ)/と\名乗(なの)り\給(たま)ふ。\九条院(くでう/の-ゐん)/の\常盤(ときは)/が\腹(はら)/に/も\三人\有(あ)り。\今若(いまわか)\七歳(しちさい)、\乙若(おとわか)\五歳(ごさい)、\牛若(うしわか)\当歳子(たうざいご)/なり。\清盛(きよもり)\是(これ)/を\取(と)つ/て\斬(き)る/べき\由(よし)/を/ぞ\申(まう)し/ける。\

常盤(ときは)\都落(みやこおち)/の\事(こと) S0102

\永暦(えいりやく)-元年+正月-十七日/の\暁(あかつき)、\常盤(ときは)\三人/の\子供(こ-ども)/を\引(ひ)き-具(ぐ)し/て、\大和国(やまと/の-くに)\宇陀郡(うだ/の-こほり)\岸岡(きしのをか)/と\言(い)ふ\所(ところ)/に\契約(けいやく)/の\親(した)しき\者(もの)\有(あ)り。\是(これ)/を\頼(たの)み-たづね/て\行(ゆ)き/けれ/ども、\世間(せけん)/の\乱(みだ)るる\折節(をりふし)/なれ/ば、\頼(たの)ま/れ/ず。\其(そ)/の\国(くに)/の\たいとうじ/と\言(い)ふ\所(ところ)/に\隠(かく)れ-居(ゐ)/たり/ける。\常盤(ときは)/が\母(はは)\関屋(せきや)/と\申(まう)す\者(もの)、\楊梅町(やまももちやう)/に\有(あ)り/ける/を、\六波羅(ろくはら)/より\取(と)り-出(い)だし、\糺問(きうもん)=せ/らるる\由(よし)\聞(き)こえ/けれ/ば、\常盤(ときは)\是(これ)/を\悲(かな)しみ、\母(はは)/の\命(いのち)/を\助(たす)け/ん/と\すれ/ば、\三人/の\子供(こ-ども)/を\斬(き)ら/る/べし。\子供(こ-ども)/を\助(たす)け/ん/と\すれ/ば、\老い/たる\親(おや)/を\失(うしな)ふ/べし。\親(おや)/に/は\子/を/ば\如何(いかが)\思(おも)ひ-かへ\候(さうら)ふ/べき。\親/の\孝養(けうやう)=する\者(もの)/を/ば、\

P038

堅牢地神(けんらうぢじん)/も\納受(なふじゆ)\有(あ)る/と\なれ/ば、\子供(こ-ども)/の\為(ため)/に/も\有(あ)り/なん/と\思(おも)ひ-続(つづ)け、\三人/の\子供(こ-ども)\引(ひ)き-具(ぐ)し/て\泣(な)く泣(な)く\京(きやう)/へ/ぞ\出(い)で/に/ける。\六条(ろくでう)/へ/の\事(こと)\聞(き)こえ/けれ/ば、\悪七兵衛(あくしちびやうゑ)-景清(かげきよ)、\堅物(けんもつ)-太郎/に\仰(おほ)せ/つ、\子供(こ-ども)\具(ぐ)し、\六条(ろくでう)/へ/ぞ\具足(ぐそく)=す。\清盛(きよもり)\常盤(ときは)/を\見(み)\給(たま)ひ/て、\日頃(ひごろ)/は\火/に/も\水(みづ)/に/も/と\思(おも)は/れ/ける/が、\怒(いか)れ/る\心(こころ)/も\和(やはら)ぎ/けり。\常盤(ときは)/と\申(まう)す/は\日本一(につぽんいち)/の\美人(びぢん)/なり。\九条院(くでう/の-ゐん)/は\事(こと)/を\好(この)ま/せ\給(たま)ひ/けれ/ば、\洛中(らくちゆう)/より\容顔(ようがん)\美麗(びれい)/なる\女(をんな)/を\千人\召(め)さ/れ/て、\其(そ)/の\中/より\百人、\又(また)\百人/の\中/より\十人、\又(また)\十人/の\中/より\一人\撰(えら)び-出(い)ださ/れ/たる\美女(びぢよ)/なり。\清盛(きよもり)\我(われ)/に/だに/も\従(した)がは/ば、\末(すゑ)/の=世/に/は\子孫(しそん)/の\如何(いか)/なる\敵(かたき)/と/も\なら/ば\なれ。\三人/の\子供(こ-ども)/を/も\助(たす)け/ばや/と\思(おも)は/れ/ける。\頼方(よりかた)\景清(かげきよ)/に\仰(おほ)せ-つけ/て、\七条(しちでう)-朱雀(しゆしやか)/に/ぞ\置(お)か/れ/ける。\日番(ひばん)/を/も\頼方(よりかた)\はからひ/に/して\守護(しゆご)=し/ける。\清盛(きよもり)\常(つね)/は\常盤(ときは)/が\もと/へ\文(ふみ)/を\遣(つか)はさ/れ/けれ/ども、\

P039

取(と)り/て/だに/も\見(み)/ず。\され/共(ども)\子供(こ-ども)/を\助(たす)け/ん/が\為(ため)/に\遂(つひ)/に/は\従(したが)ひ\給(たま)ひ/けり。\さて/こそ\常盤(ときは)\三人/の\子供(こ-ども)/を/ば\所々(ところどころ)/にて\成人(せいじん)\させ\給(たま)ひ/けり。\今若(いまわか)\八歳(はつさい)/と\申(まう)す\春(はる)/の\頃(ころ)/より\観音寺(くわんおんじ)/に\上(のぼ)せ\学問(がくもん)\させ/て、\十八/の\年(とし)\受戒(じゆかい)、\禅師(ぜんじ)/の-君(きみ)/と/ぞ\申(まう)し/ける。\後(のち)/に/は\駿河国(するが/の-くに)\富士(ふじ)/の\裾(すそ)/に\おはし/ける/が\悪襌師殿(あくぜんじどの)/と\申(まう)し/けり。\八条(はちでう)/に\おはし/ける/は、\そし/にて\おはし/けれ/ども、\腹(はら)\悪(あ)しく\恐(おそ)ろしき\人/にて、\賀茂(かも)、\春日(かすが)、\稲荷(いなり)、\祇園(ぎをん)/の\御祭(おんまつり)ごと/に\平家(へいけ)/を\狙(ねら)ふ。\後(のち)/に/は\紀伊国(きい/の-くに)/に\有(あ)り/ける\新宮(しんぐう/の)-十郎(じふらう)-義盛(よしもり)\世(よ)/を\乱(みだ)り/し\時、\東海道(とうかいだう)/の\墨俣河(すのまたがは)/にて\討(う)た/れ/けり。\牛若(うしわか)/は\四つ/の\年(とし)/まで\母(はは)/の\もと/に\有(あ)り/ける/が、\世(よ)/の\幼(をさな)ひ\者(もの)/より/も\心様(こころざま)\振舞(ふるまひ)\人/に\越(こ)え/たり/しか/ば、\清盛(きよもり)\常(つね)/は\心/に\かけ/て\宣(のたま)ひ/ける/は、\「敵(かたき)/の\子/を\一所/にて\育(そだ)て/て/は、\遂(つひ)/に/は\如何(いかが)\有(あ)る/べき」/と\仰(おほ)せ/られ/けれ/ば、\京/より\東(ひがし)、\山科(やましな)/と\言(い)ふ\所(ところ)/に\源氏(げんじ)\相伝(さうでん)の、\遁世(とんせい)=し/て\幽(かすか)/なる\住居(すまひ)/にて\有(あ)り/ける\所/に\七歳(しちさい)/まで\置(お)き/て\育(そだ)て\給(たま)ひ/けり。\

牛若(うしわか)\鞍馬入(くらまいり)/の\事(こと) S0103

\常盤(ときは)/が\子供(こ-ども)\成人(せいじん)=する/に\従(したが)ひ/て、\中々(なかなか)\心(こころ)-苦(ぐる)しく、\初(はじ)めて\人/に\従(したが)は/せ/ん/も\由(よし)-なし。\習(なら)は/ね/ば\殿上(てんしやう)/に/も\交(まじ)はる/べく/も\なし。\只(ただ)\法師(ほふし)/に\なし/て、\跡(あと)/を/も\弔(とぶら)ひ

P040

/て/なんど\思(おも)ひ/て、\鞍馬(くらま)/の=別当(べつたう)=東光坊(とうくわう-ばう)/の-阿闍梨(あじやり)/は\義朝(よしとも)/の\祈(いの)り/の\師(し)/にて\おはし/ける\程(ほど)/に、\御使(おん-つかひ)/を\遣(つか)はし/て\仰(おほ)せ/ける/は、\「義朝(よしとも)/の\御末(おん-すゑ)/の\子\牛若殿(うしわか-どの)/と\申(まう)し\候(さうら)ふ/を\且(かつう)/は\知召(しろしめ)し/て/こそ\候(さうら)ふ/らめ。\平家(へいけ)\世ざかり/にて\候(さうら)ふ/に、\女(をんな)/の\身/と/して\持(も)ち/たる/も\心(こころ)-苦(ぐる)しく\候(さうら)へ/ば、\鞍馬(くらま)/へ\参(まゐ)らせ\候(さうら)ふ/べし。\猛(たけ)く/とも\なだしき\心(こころ)/も\つけ、\書(ふみ)/の\一巻/を/も\読(よ)ま/せ、\経(きやう)/の\一字(いちじ)/を/も\覚(おぼ)え/させ/て\賜(たま)はり\候(さうら)へ」/と\申(まう)さ/れ/けれ/ば、\東光坊(とうくわう-ばう)/の\御返事(ご-へんじ)/に/は、\「故(こ)-頭殿(かう/の-との)/の\君達(きんだち)/にて\渡(わた)ら/せ\給(たま)ひ\候(さうら)ふ/こそ\殊(こと)/に\悦(よろこ)-入(い)り\候(さうら)へ」/とて、\山科(やましな)/へ\急(いそ)ぎ\御迎(おん-むか)ひ/に\人/を/ぞ\参(まゐ)らせ/ける。\七歳(しちさい)/と\申(まう)す\二月(きさらぎ)\はじめ/に\鞍馬(くらま)/へ/と/ぞ\上(のぼ)ら/れ/ける。\其(そ)/の-後\昼(ひる)/は\終日(ひめもす)/に\師/の\御坊(ごばう)/の\御前(お-まへ)/にて\経(きやう)/を\誦(よ)み、\書(ふみ)\学(まな)び/て、\夕日(ゆふひ)\西/に\傾(かたぶ)け/ば、\夜/の\更(ふ)け-行(ゆ)く/に\仏(ほとけ)/の\御燈(み-あかし)/の\消(き)ゆる/まで/は\とも/に\物(もの)/を\読(よ)み、\五更(ごかう)/の\天(てん)/に/も\なれ/共(ども)\あま/も\宵(よひ)/も\すぐ/まで、\学問(がくもん)/に\心(こころ)

P041

/を/のみ/ぞ\尽(つく)し/ける。\東光坊(とうくわう-ばう)/も\山(やま)\三井寺(みゐでら)/に/も\是=程(ほど)/の\児(ちご)\有(あ)る/べし/とも\覚(おぼ)え/ず、\学問(がくもん)/の\精(せい)/と\申(まう)し、\心様(こころざま)\眉目(みめ)=形(かたち)\類(るい)\なく\おはし/けれ/ば、\良智(れうち)-坊(ばう)/の-阿闍梨(あじやり)、\覚日坊(かくにち-ばう)/の-律師(りつし)/も\「かく/て\廿歳(はたち)/ばかり/まで/も\学問(がくもん)=し\給(たま)ひ\候(さうら)は/ば、\鞍馬(くらま)/の-東光坊(とうくわう-ばう)/より\後(のち)/も\仏法(ぶつぽふ)/の\種(たね)/を\つぎ、\多聞(たもん)/の\御宝(おん-たから)/に/も\なり\給(たま)は/んずる\人」/と/ぞ\申(まう)さ/れ/ける。\母(はは)/も\是(これ)/を\聞(き)き、\「牛若(うしわか)\学問(がくもん)/の\精(せい)\よく\候(さうら)ふ/とも、\里(さと)/に\常(つね)/に\有(あ)り/なん/と\し\候(さうら)は/ば、\心(こころ)/も\不用(ふよう)/に\なり、\学問(がくもん)/を/も\怠(おこた)り/な/んず。\恋(こひ)しく\見(み)/たけれ/と\申(まう)し\候(さうら)は/ば、\人/を\賜(たま)はり\候(さうらひ)/て、\母(はは)/は\それ/まで\参(まゐ)り、\見(み)/も\し、\人/に\見(み)え/られ/て\返(かへ)し\候(さうら)は/ん」/と\申(まう)さ/れ/ける。\「さ\なく/とも\児(ちご)/を\里(さと)/へ\下(くだ)す\事(こと)\おぼろ-げ/なら/ぬ/にて\候(さうら)ふ」/とて、\一年/に\一度、\二年/に\一度/も\下(くだ)さ/ず。\かかる\学問(がくもん)/の\精(せい)\いみじき\人/の\如何(いか)/なる\天魔(てんま)/の\すすめ/に/や\有(あ)り/けん、\十五/と\申(まう)す\秋(あき)/の\頃(ころ)/より\学問(がくもん)/の\心(こころ)\以(もつ)て/の-外(ほか)/に\変(かは)り/けり。\其(そ)/の\故(ゆゑ)/は\古(ふる)き\郎等(らうどう)/の\謀反(むほん)/を\すすむる/にて/ぞ\有(あ)り/ける。\

聖門(しやうもん)-坊(ばう)/の\事(こと) S0104

\四条(しでう)-室町(むろまち)/に\古(ふ)り/たる\郎等(らうどう)/の\有(あ)り/ける。\すり法師(ほふし)/なり/ける/が、\是(これ)/は\恐(おそ)ろしき\者(もの)/の\子孫(しそん)/なり。\左馬頭殿(さま/の-かう/の-との)/の\御乳母子(おん-めのとご)\鎌田(かまだ)-次郎(じらう)-正清(まさきよ)/が\子/なり。\平治(へいぢ)/の-乱(らん)/の\時(とき)

P042

/は\十一歳(じふいつさい)/に\なり/ける/を、\長田(おさだ)/の-庄司(しやうじ)\是(これ)/を\斬(き)る/べき\由(よし)\聞(き)こえ/けれ/ば、\外戚(げしやく)/の\親(した)しき\者(もの)\有(あ)り/ける/が、\やうやう/に\隠(かく)し-置(お)き/て、\十九/にて\男(をとこ)/に\なし/て、\鎌田(かまだ/の)-三郎-正近(まさちか)/と/ぞ\申(まう)し/ける。\正近(まさちか)\二十一/の\年(とし)\思(おも)ひ/ける/は\保元(ほうげん)/に\為義(ためよし)\討(う)た/れ\給(たま)ひ/ぬ。\平治(へいぢ)/に\義朝(よしとも)\討(う)た/れ\給(たま)ひ/て\後(のち)/は、\子孫(しそん)\絶(た)え-果(は)て/て、\弓馬(きゆうば)/の\名/を\埋(うづ)ん/で、\星霜(せいざう)/を\送(おく)り\給(たま)ふ。\其(そ)/の-時(とき)\清盛(きよもり)/に\亡(ほろ)ぼさ/れ/し\者(もの)/なれ/ば、\出家(しゆつけ)=し/て\諸国(しよこく)\修業(しゆぎやう)=し/て、\主(しう)/の\御菩提(ご-ぼだい)/を/も\弔(とぶら)ひ、\親/の\後世(ごせ)/を/も\弔(とぶら)ひ\候(さうら)は/ばや/と\思(おも)ひ/けれ/ば、\鎮西(ちんぜい)/の\方/へ/ぞ\修行(しゆぎやう)=し/ける。\筑前国(ちくぜん/の-くに)\御笠(みかさ)/の-郡(こほり)\大宰府(ださいふ)/の\安楽寺(あんらくじ)/と\言(い)ふ\所(ところ)/に\学問(がくもん)=し/て\有(あ)り/ける/が、\故郷(ふるさと)/の\事(こと)\思(おも)ひ-出(い)だし/て、\都(みやこ)/に\帰(かへ)り/て、\四条(しでう)/の\御堂(みだう)/に\行(おこな)ひ-澄(す)まし/て\ゐ/たり/けり。\法名(ほふみやう)/を/ば\聖門(しやうもん)-坊(ばう)/と/ぞ\申(まう)し/ける。\又(また)\四条(しでう)/の-聖(ひじり)/とも\申(まう)し/けり。\勤行(つとめ)/の\隙(ひま)/に/は\平家(へいけ)/の\繁昌(はんじやう)=し/ける/を\見(み)/て、\めざましく\思(おも)ひ/ける。\如何(いか)/なれ/ば\平家(へいけ)/の\大政大臣(だいじやうだいじん)/の\官(くわん)/に\上(あが)り、\末(すゑ)/まで/も\臣下(しんか)=卿相(けいしやう)/に\なり\給(たま)ふ/らん。\源氏(げんじ)/は\保元(ほうげん)、\平治(へいぢ)/の=合戦(かつせん)/に\皆(みな)\滅(ほろ)ぼさ/れ/て、\大人(おとな)しき/は\斬(き)ら/れ、\幼(をさな)ひ/は\此処(ここ)-彼処(かしこ)/に\押(お)し-篭(こ)め/られ/て、\今/まで\かたち/を/も\差(さ)し-出(い)だし\給(たま)は/ず。\果報(くわほう)/も\生(う)まれ-変(かは)り、\心(こころ)/も\剛(かう)/に\あら/んずる\源氏(げんじ)/の、\あはれ\思召(おぼしめ)し-立(た)ち\給(たま)へ/かし。\何方(いづかた)/へ/なり/とも\御使(おん-つかひ)\し/て\世/を\乱(みだ)し、\本意(ほんい)/を\遂(と)げ/ばや/と/ぞ\思(おも)ひ/ける。\勤行(つとめ)/の\隙々(ひまひま)/に/は\指(ゆび)/を\折(を)り/て、\国々/の\源氏(げんじ)/を/ぞ\数(かぞ)へ/ける。\紀伊国(きい/の-くに)/に/は\新宮(しんぐう/の)-十郎(じふらう)-義盛(よしもり)、\河内国(かはち/の-くに)/に/は\石川(いしかは/の)-判官(はうぐわん)-義兼(よしかね)、\

P043

津国(つ/の-くに)/に/は\多田(ただ/の)-蔵人-行綱(ゆきつな)、\都/に/は\源-三位-頼政卿(よりまさ/の-きやう)、\卿君(きやうのきみ)=円(ゑん)しん、\近江国(あふみ/の-くに)/に/は\佐々木(ささき/の)-源三(げんざう)-秀義(ひでよし)、\尾張国(をはり/の-くに)/に/は\蒲(かば)/の-冠者(くわんじや)、\駿河国(するが/の-くに)/に/は\阿野(あの/の)-禅師(ぜんじ)、\伊豆国(いづ/の-くに)/に/は\兵衛佐(ひやうゑ/の-すけ)-頼朝(よりとも)、\常陸国(ひたち/の-くに)/に/は\志田(しだ/の)-三郎-先生(せんじやう)-義教(よしのり)、\佐竹(さたけ/の)-別当(べつたう)-昌義(まさよし)、\上野国(かうづけ/の-くに)/に/は\利根(とね)、\吾妻(あがつま)、\是(これ)/は\国(くに)/を\隔(へだ)て/て\遠(とほ)けれ/ば、\力(ちから)\及(およ)ば/ず。\都(みやこ)\近(ちか)き\所(ところ)/に/は\鞍馬(くらま)/に/こそ\頭殿(かう/の-との)/の\末(すゑ)/の\御子、\牛若殿(うしわか-どの)/とて\おはする\者(もの)/を、\参(まゐ)り/て\見(み)\奉(たてまつ)り\心(こころ)-がら\げにげにしく\おはしまさ/ば、\文(ふみ)\賜(たま)はり/て、\伊豆国(いづ/の-くに)/へ\下(くだ)り、\兵衛督殿(ひやうゑ/の-すけ-どの)/の\御方(おん-かた)/に\参(まゐ)り、\国(くに)/を\催(もよ)ほし/て、\世(よ)/を\乱(みだ)さ/ばや/と\思(おも)ひ/けれ/ば、\折節(をりふし)\其(そ)/の-頃(ころ)\四条(しでう)/の\御堂(みだう)/も\夏(げ)/の\時分/にて\有(あ)り/ける/を\打(う)ち-捨(す)て/て、\やがて\鞍馬(くらま)/へ/と/ぞ\上り/ける。\別当(べつたう)/の\縁(えん)/に\たたずみ/ける\程(ほど)/に、\「四条(しでう)/の-聖(ひじり)\おはし/たり」/と\申(まう)し/けれ/ば、\「承(うけたまは)り\候(さうら)ふ」/と\申(まう)さ/れ/けれ/ば、\さら/ば/とて\東光坊(とうくわう-ばう)/の\もと/に/ぞ\置(お)か/れ/ける。\内々/に/は\悪心(あくしん)/を\差(さ)し-はさみ、\

P044

謀反(むほん)/を\起(おこ)し/て\来(きた)れ/る/とも\知(し)ら/ざり/けり。\ある=夜/の\徒然(つれづれ)/に、\人\静(しづ)まり/て、\牛若殿(うしわか-どの)/の\おはする\所/へ\参(まゐ)り/て、\御耳(おん-みみ)/に\口(くち)/を\あて/て\申(まう)し/ける/は、\「知召(しろしめ)さ/れ/ず\候(さうら)ふ/や、\今(いま)/まで\思召(おぼしめ)し-立(た)ち\候(さうら)は/ぬ。\君(きみ)/は\清和天皇(せいわ-てんわう)\十代/の\御末(おん-すゑ)、\左馬頭殿(さま/の-かう/の-との)/の\御子、\かく\申(まう)す/は\頭殿(かう/の-との)/の\御乳母子(おん-めのとご)/に\鎌田(かまた/の)-次郎(じらう)-兵衛(ひやうゑ)/が\子/にて\候(さうら)ふ。\御一門(いちもん)/の\源氏(げんじ)\国々(くにぐに)/に\打(う)ち-篭(こ)め/られ/て\おはする/を/ば、\心憂(こころう)し/と/は\思召(おぼしめ)さ/れ/ず\候(さうら)ふ/や」/と\申(まう)し/けれ/ば、\其(そ)/の-頃(ころ)\平家(へいけ)/の\世/を\取(と)り/て\盛(さかり)/なれ/ば、\たばかり/て\すかす/やらん/と\打(う)ち-解(と)け\給(たま)は/ざり/けれ/ば、\源氏(げんじ)\重代(ぢゆうだい)/の\事(こと)/を\委(くわ)しく\申(まう)し/ける。\身/こそ\知(し)り\給(たま)は/ね/ども、\かねて\左様(さやう)/の\者(もの)\有(あ)る/と\聞(き)き/しか/ば、\さて/は\一所/にて/は\かなふ/まじ。\所々/に/は/とて\聖門(しやうもん)/を/ば\返(かへ)さ/れ/けり。\

牛若(うしわか)\貴船詣(きぶねまうで)/の\事(こと) S0105

\聖門(しやうもん)/に\逢(あ)ひ/て\給(たま)ひ/て\後(のち)/は、\学問(がくもん)/の\事(こと)/は\跡形(あとかた)-なく\忘(わす)れ-はて/て、\明暮(あけくれ)\謀反(むほん)/の\事(こと)/を/のみ/ぞ\思召(おぼしめ)し/ける。\謀反(むほん)\起(おこ)す\程(ほど)/なら/ば、\早業(はやわざ)/を\せ/で/は\叶(かな)ふ/まじ。\まづ\早業(はやわざ)/を\習(なら)は/ん/とて、\此(こ)/の\坊(ばう)/は\諸人(しよじん)/の\寄合所(よりあひどころ)/なり。\如何(いか)/に\叶(かな)ひ-難(がた)き/とて、\鞍馬(くらま)/の\奥(おく)/に\僧正(そうじやう)/が-谷(たに)/と\言(い)ふ\所(ところ)\有(あ)り。\昔(むかし)/は\如何(いか)/なる\人/が\崇(あが)め\奉(たてまつ)り/けん、\貴船(きぶね)/の-明神

P045

/とて\霊験(れいげん)\殊勝(しゆせう)/に\渡(わた)ら/せ\給(たま)ひ/けれ/ば、\智恵(ちゑ)\有(あ)る\上人(しやうにん)/も\行(おこな)ひ\給(たま)ひ/けり。\鈴(れい)/の\声(こゑ)/も\怠(おこた)ら/ず。\神主(かんぬし)/も\有(あ)り/ける/が、\御神楽(み-かぐら)/の\鼓(つづみ)/の\音(おと)/も\絶(た)え/ず、\あらた/に\渡(わた)ら/せ\給(たま)ひ/しか/ども、\世\末(すゑ)/に\なら/ば、\仏(ほとけ)/の\方便(ほうべん)/も\神(かみ)/の\験徳(けんとく)/も\劣(おと)ら/せ\給(たま)ひ/て、\人\住(す)み-荒(あら)し、\偏(ひと)へ/に\天狗(てんぐ)/の\住家(すみか)/と\なり/て、\夕日(ゆふひ)\西(にし)/に\傾(かたぶ)け/ば、\物怪(もののけ)\喚(おめ)き-叫(さけ)ぶ。\され/ば\参(まゐ)り-よる\人/を/も\取(と)り-悩(なや)ます\間(あひだ)、\参篭(さんろう)=する\人/も\なかり/けり。\され/ども\牛若(うしわか)\かかる\所(ところ)/の\有(あ)る\由(よし)/を\聞(き)き\給(たま)ひ、\昼(ひる)/は\学問(がくもん)/を\し\給(たま)ふ\体(てい)/に\もてなし、\夜(よる)/は\日頃(ひごろ)\一所(いつしよ)/にて\と/も-かく/も\なり\参(まゐ)らせ/ん/と\申(まう)し/つる\大衆(だいしゆ)/に/も\知(し)らせ/ず/して、\別当(べつたう)/の\御護(おん-まぼ)り/に\参(まゐ)らせ/たる\敷妙(しきたへ)/と\言(い)ふ\腹巻(はらまき)/に\黄金作(こがねづく)り/の=太刀(たち)\帯(は)き/て、\只(ただ)\一人\貴船(きぶね)/の-明神(みやうじん)/に\参(まゐ)り\給(たま)ひ、\念誦(ねんじゆ)\申(まう)さ/せ\給(たま)ひ/ける/は、\「南無(なむ)\大慈(だいじ)=大悲(だいひ)/の\明神(みやうじん)、\八幡(はちまん)-大菩薩(だいぼさつ)」/と\掌(たなごころ)/を\合(あは)せ/て、\源氏(げんじ)/を\守(まぼ)ら/せ\給(たま)へ。\宿願(しゆくぐわん)\誠(まこと)/に\成就(じやうじゆ)\あら/ば、\玉(たま)/の\御宝殿(ご-ほうでん)/を\造(つく)り、\千町(せんちやう)/の\所領(しよりやう)/を\寄進(きしん)=し\奉(たてまつ)ら/ん」/と\祈誓(きせい)=し/て、\正面(しやうめん)/より\未申(ひつじ-さる)/に\むかひ/て\立(た)ち\給(たま)ふ。\四方(しはう)/の\草木(くさき)/を/ば\平家(へいけ)/の\一類(いちるい)/と\名づけ、\大木\二本\有(あ)り/ける/を\一本(いつぽん)/を/ば\清盛(きよもり)/と\名づけ、\太刀(たち)/を\抜(ぬ)き/て、\散々(さんざん)/に\切(き)り、\懐(ふところ)/より\毬杖(ぎつちやう)/の\玉(たま)/の\様(やう)/なる\物/を\取(と)り-出(い)だし、\木/の\枝(えだ)/に\かけ/て、\一(ひと)つ/を/ば\重盛(しげもり)/が\首(くび)/と\名づけ、\一(ひと)つ/を/ば\清盛(きよもり)/が\首/と/を\懸(か)け/られ/ける。\かく/て\暁(あかつき)/に/も\なれ/ば、\我(わ)/が\方(かた)/に\帰(かへ)り、\衣(きぬ)\引(ひき)-かづき/て\臥(ふ)し\給(たま)ふ。\人\是(これ)/を\知(し)ら/ず。\和泉(いづみ)/と\申(まう)す\法師(ほふし)/の\御介錯(ご-かいしやく)=し/ける/が、\此(こ)/の\御有様(おん-ありさま)

P046

\只事(ただごと)/に/は\あら/じ/と\思(おも)ひ/て、\目(め)/を\放(はな)さ/ず、\ある=夜\御跡(おん-あと)/を\慕(した)ひ/て\隠(かく)れ/て\叢(くさむら)/の\蔭(かげ)/に\忍(しの)び-居(ゐ)/て\見(み)/けれ/ば、\斯様(かやう)/に\振舞(ふるま)ひ\給(たま)ふ\間(あひだ)、\急(いそ)ぎ\鞍馬(くらま)/に\帰(かへ)り/て、\東光坊(とうくわう-ばう)/に\此(こ)/の\由(よし)\申(まう)し/けれ/ば、\阿闍梨(あじやり)\大(おほ)き/に\驚(おどろ)き、\良智(れうち)-坊(ばう)/の=阿闍梨(あじやり)/に\告げ、\寺(てら)/に\触(ふ)れ/て、\「牛若殿(うしわか-どの)/の\御髪(みぐし)\剃(そ)り\奉(たてまつ)れ」/と/ぞ\申(まう)さ/れ/ける。\良智(れうち)-坊(ばう)\此(こ)/の\事(こと)/を\聞(き)き\給(たま)ひ/て、\「幼(をさな)き\人/も\様(やう)/に/こそ\よれ。\容顔(ようがん)\世/に\越(こ)え/て\おはすれ/ば、\今年(ことし)/の\受戒(じゆかい)\いたはしく/こそ\おはすれ。\明年(みやうねん)/の\春(はる)/の\頃(ころ)\剃(そ)り\参(まゐ)ら/させ\給(たま)へ」/と\申(まう)し/けれ/ば、\「誰(たれ)/も\御名残(おん-なごり)/は\さ/こそ\思(おも)ひ\候(さうら)へ/共(ども)、\斯様(かやう)/に\御心(おん-こころ)\不用(ふよう)/に\なり/て\御-わたり\候(さうら)へ/ば、\我(わ)/が\為(ため)、\御身(おん-み)/の\為(ため)\然(しか)る/べから/ず\候(さうら)ふ。\只(ただ)\剃(そ)り\奉(たてまつ)れ」/と\宣(のたま)ひ/けれ/ば、\牛若殿(うしわか-どの)\何(なに)/とも\あれ、\寄(よ)り/て\剃(そ)ら/ん/と\する\者(もの)/を/ば、\突(つ)か/んずる\もの/を/と、\刀(かたな)/の\柄(つか)/に\手/を\掛(か)け/て\おはしまし/けれ/ば、\左右(さう)-なく\寄(よ)り/て\剃(そ)る/べし/共(とも)\見(み)え/ず。\覚日坊(かくにち-ばう)

P047

/の-律師(りつし)\申(まう)さ/れ/ける/は、\「是(これ)/は\諸人/の\寄合所(よりあひどころ)/にて\静(しづ)か/なら/ぬ\間(あひだ)、\学問(がくもん)/も\御心(おん-こころ)/に\入(い)ら/ず\候(さうら)へ/ば、\それがし/が\所(ところ)/は\傍(かたはら)/にて\候(さうら)へ/ば、\御心(おん-こころ)\静(しづか)/に/も\御学問(ごがくもん)\候(さうら)へ/かし」/と\申(まう)さ/れ/けれ/ば、\東光坊(とうくわう-ばう)/も\さすが/に\いたはしく\思(おも)は/れ/けん、\さら/ば/とて\覚日坊(かくにち-ばう)/へ\入(い)れ\奉(たてまつ)り\給(たま)ひ/けり、\御名/を/ば\変(か)へ/られ/て\遮那王殿(しやなわう-どの)/と/ぞ\申(まう)し/ける。\それ/より\後(のち)/に/は\貴船(きぶね)/の=詣(まうで)/も\止(とど)まり/ぬ。\日々/に\多聞(たもん)/に\入堂(にふだう)=し/て、\謀反(むほん)/の\事(こと)/を/ぞ\祈(いの)ら/れ/ける。\

吉次(きちじ)/が\奥州物語(あうしうものがたり)/の\事(こと) S0106

\かく/て\年(とし)/も\暮(く)れ/ぬれ/ば、\御年\十六/に/ぞ\なり\給(たま)ふ。\正月(むつき)/の\末(すゑ)\二月(きさらぎ)/の\初(はじ)め/の\事(こと)/なる/に、\多聞(たもん)/の\御前(お-まへ)/に\参(まゐ)り/て\所作(しよさ)=し/て\おはし/ける\所(ところ)/に、\其(そ)/の-頃(ころ)\三条(さんでう)/に\大福長者(だいふくちやうじや)\有(あ)り。\名/を/ば\吉次(きちじ)-信高(のぶたか)/と/ぞ\申(まう)し/ける。\毎年(まいねん)\奥州(あうしう)/に\下(くだ)る\金商人(こがねあきんど)/なり/ける/が、\鞍馬(くらま)/を\信(しん)じ\奉(たてまつ)り/ける\間(あひだ)、\それ/も\多聞(たもん)/に\参(まゐ)り/て\念誦(ねんじゆ)=し/て\ゐ/たり/ける/が、\此(こ)/の\幼(をさな)ひ\人/を\見(み)\奉(たてまつ)り/て、\あら\美(うつく)し/の\御児(おん-ちご)/や、\如何(いか)/なる\人/の\君達(きんだち)/やらん。\然(しか)る/べき\人/にて\ましまさ/ば、\大衆(だいしゆ)/も\数多(あまた)\付(つ)き\参(まゐ)らす/べき/に、\度々(たびたび)\見(み)\申(まう)す/に、\只(ただ)\一人\おはします/こそ\怪(あや)しけれ。\此(こ)/の\山/に\左馬頭殿(さま/の-かう/の-との)/の\君達(きんだち)/の\おはする\物(もの)/を。\「誠(まこと)/やらん、\

P048

秀衡(ひでひら)/も\「鞍馬(くらま)/と\申(まう)す\山寺(やまでら)/に\左馬頭殿(さま/の-かう/の-との)/の\君達(きんだち)\おはします/なれ/ば、\太宰(ださい/の)-大弐位(だいにゐ)=清盛(きよもり)/の、\日本(につぽん)\六十六ケ国/を\従(したが)へ/ん/と、\常(つね)/は\宣(のたま)ふ/なる/に、\源氏(げんじ)/の\君達(きんだち)/を\一人\下(くだ)し\参(まゐ)らせ、\磐井(いはゐ/の)-郡(こほり)/に\京(きやう)/を\建(た)て、\二人/の\子供(こ-ども)\両国(りやうごく)/の\受領(じゆりやう)\させ/て、\秀衡(ひでひら)\生(い)き/たら/ん\程(ほど)/は、\大炊介(おほい/の-すけ)/に\なり/て、\源氏(げんじ)/を\君(きみ)/と\かしづき\奉(たてまつ)り、\上(うえ)\見(み)/ぬ\鷲(わし)/の/ごとく/にて\あら/ばや」/と\宣(のたま)ひ\候(さうら)ふ\もの/を」/と\言(い)ひ\奉(たてまつ)り、\拐(かどはか)し\参(まゐ)らせ、\御供(おん-とも)=し/て\秀衡(ひでひら)/の\見参(げんざん)/に\入(い)れ、\引出物(ひきでもの)\取(と)り/て\徳(とく)\付(つ)か/ばや/と\思(おも)ひ、\御前(お-まえ)/に\畏(かしこ)まつ/て\申(まう)し/ける/は、\「君(きみ)/は\都(みやこ)/に/は\如何(いか)/なる\人/の\御君達(ご-きんだち)/にて\おはします/やらん、\是(これ)/は\京/の\者(もの)/にて\候(さうら)ふ/が、\金(こがね)/を\商(あきな)ひ/て\毎年(まいねん)\奥州(あうしう)/へ\下(くだ)る\者(もの)/にて\候(さうら)ふ/が、\奥方(おくがた)/に\知召(しろしめ)し/たる\人/や\御入(おん-いり)\候(さうら)ふ」/と\申(まう)し/けれ/ば、\「片(かた)ほとり/の\者(もの)/なり」/と\仰(おほ)せ/られ/て、\返事(へんじ)/も\し\給(たま)は/ず。\是(これ)\ごさんなれ、\聞(き)こゆる\黄金商人(こがねあきんど)\吉次(きちじ)/と\言(い)ふ\者(もの)/なり。\奥州(あうしう)/の\案内者(あんないしや)/やらん、\彼(かれ)/に\問(と)は/ばや/と\思(おぼ)し召(め)し/て\「陸奥(みちのく)/と\言(い)ふ/は、\如何(いか)-程(ほど)/の\広(ひろ)き\国(くに)/ぞ」/と\問(と)ひ\給(たま)へ/ば、\「大過/の\国(くに)/にて\候(さうら)ふ。\常陸国(ひたち/の-くに)/と\陸奥(みちのく)/と/の\堺(さかひ)、\菊田(きくた)」/の-関(せき)/と\申(まう)し/て、\出羽(では)/と\奥州(あうしう)/と/の\堺(さかひ)/を/ば\伊奈(いな)/の-関(せき)/と\申(まう)す。\其(そ)/の\中\五十四郡(ごじふしぐん)/と\申(まう)し/けれ/ば、\「其(そ)/の\中/に\源平(げんぺい)/の=乱(らん)\来(き)たら/ん\用(よう)/に\立(た)つ/べき\者(もの)\如何(いか)-程(ほど)\有(あ)る/べき」/と\問(と)ひ\給(たま)へ/ば、\国/の\案内(あんない)/は\知(し)り/たり。\吉次(きちじ)\暗(くら)から/ず/ぞ\申(まう)し/ける。\「昔(むかし)\両国(りやうごく)/の\大将軍(だいしやうぐん)/を/ば\おか/の-大夫(たいふ)/と/ぞ\申(まう)し/ける。\彼等(かれ-ら)/が\一人/の\子\有(あ)り。\安倍(あべ/の)-権守(ごん/の-かみ)/と/ぞ\申(まう)し/ける。\

P049

子供(こ-ども)\数多(あまた)\有(あ)り。\嫡子(ちやくし)\厨川(くりやがは/の)-次郎(じらう)-貞任(さだたふ)、\二男(じなん)\鳥海(とりのみ/の)-三郎-宗任(むねたふ)、\家任(いへたう)、\盛任(もりたう)、\重任(しげたう)/とて\六人/の\末(すゑ)/の\子/に\境(さかひ)/の-冠者(くわんじや)-良増(りやうぞう)/とて、\霧(きり)/を\残(のこ)し\霞(かすみ)/を\立(た)て、\敵(てき)\起(おこ)る\時(とき)/は\水(みづ)/の\底(そこ)\海(うみ)/の\中/にて\日/を\送(おく)り/など\する\曲者(くせもの)/なり。\是(これ)-等(ら)\兄弟(きやうだい)\丈(たけ)/の\高(たか)-さ\唐人/に/も\越(こ)え/たり。\貞任(さだたふ)/が\丈(たけ)/は\九尺(きうしやく)-五寸(ごすん)、\宗任(むねたふ)/が\丈(たけ)/は\八尺(はつしやく)-五寸(ごすん)、\何(いづ)れ/も\八尺(はつしやく)/に\劣(おと)る/は\なし。\中/に/も\境(さかひ)/の-冠者(くわんじや)/は\一丈(いちぢやう)+三寸(さんずん)\候(さうらひ)/ける。\安倍(あべ/の)-権守(ごん/の-かみ)/の\世/まで/は\宣旨(せんじ)\院宣(ゐんぜん)/に/も\畏(おそ)れ/て、\毎年(まいねん)\上洛(しやうらく)=し/て\逆鱗(げきりん)/を\休(やす)め\奉(たてまつ)る。\安倍(あべ/の)-権守(ごん/の-かみ)\死去(しきよ)/の\後(のち)/は\宣旨(せんじ)/を\背(そむ)き、\偶々(たまたま)\院宣(ゐんぜん)/なる\時(とき)/は、\北陸道(ほくろくだう)\七箇国(しちかこく)/の\片道(かたみち)/を\賜(たま)はり/て\上洛\仕る/べき\由(よし)\申(まう)さ/れ\候(さうら)ひ/けれ/ば、\片道(かたみち)\賜(たま)はり\候(さうら)ふ/べき/とて\下(くだ)さ/る/べかり/し/を、\公卿(くぎやう)-僉議(せんぎ)\有(あ)り/て、\「是(これ)\天命(てんめい)/を\背(そむ)く/に/こそ\候(さうら)へ。\源平/の\大将(たいしやう)/を\下(くだ)し、\追討(ついたう)=せ/させ\給(たま)へ」/と\申(まう)さ/れ/けれ/ば、\源(みなもと)/の-頼義(よりよし)\勅宣(ちよくせん)/を\承(うけたまは)つ/て、\十六万騎/の\軍兵(ぐんびやう)/を\率(そつ)し/て、\安倍(あべ)/を\追討(ついたう)/の\為(ため)/に\陸奥(みちのく)/へ\下(くだ)し\給(たま)ふ。\駿河国(するが/の-くに)/の\住人(ぢゆうにん)\高橋(たかはし)-大蔵(おほくら)-大夫(たいふ)/に\先陣(せんぢん)/を\させ/て、\下野国(しもつけ/の-くに)\いもう/と\言(い)ふ\所(ところ)/に\著(つ)く。\貞任(さだたふ)\是(これ)/を\聞(き)き/て、\厨川(くりやがは)/の-城(じやう)/を\去(さ)つ/て\阿津賀志(あづかしゑ)/の-中山(なかやま)/を\後(うしろ)/に\あて/て、\安達(あだち)/の-郡(こほり)/に\木戸/を\立(た)て、\行方(ゆきがた)/の-原(はら)/に\馳(は)せ-向(むか)ひ/て、\源氏(げんじ)/を\待(ま)つ。\大蔵(おほくら)/の-大夫(たいふ)\大将(たいしやう)/と/して\五百-余騎(よき)\白川関(しらかは/の-せき)\打(う)ち-越(こ)え/て\行方(ゆきがた)/の-原(はら)/に\馳(は)せ-つき、\貞任(さだたふ)/を\攻(せ)む。\其(そ)/の-日/の\軍(いくさ)/に\打(う)ち-負(ま)け/て、\浅香(あさか)/の-沼(ぬま)/へ\引(ひ)き-退(しりぞ)く。\伊達郡(だて/の-こほり)\阿津賀志(あづかしゑ)/の-中山(なかやま)/に\たて-篭(こも)り、\源氏(げんじ)/は\信夫(しのぶ)/の-里(さと)\摺上河(するかみがは)/の\端(はた)、\はやしろ/と

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\言(い)ふ\所(ところ)/に\陣(ぢん)-取(ど)つ/て、\七年\夜(よる)=昼(ひる)\戦(たたか)ひ-暮(く)らす/に、\源氏(げんじ)/の\十一万騎(じふいちまん-ぎ)\皆(みな)\討(う)た/れ/て、\叶(かな)は/じ/と/や\思(おも)ひ/けん、\頼義(よりよし)\京(きやう)/へ\上(のぼ)り/て、\内裏(だいり)/に\参(まゐ)り、\頼義(よりよし)\叶(かな)ふ/まじき\由(よし)/を\申(まう)さ/れ/けれ/ば、\「汝(なんじ)\叶(かな)は/ず/は、\代官(だいくわん)/を\下(くだ)し、\急(いそ)ぎ\追討(ついたう)=せよ」/と\重(かさ)ね/て\宣旨(せんじ)\下(くだ)さ/れ/けれ/ば、\急(いそ)ぎ\六条(ろくでう)-堀河(ほりかは)/の\宿所(しゆくしよ)/へ\帰(かへ)り、\十三/に\なる\子息(しそく)/を\内裏(だいり)/に\参(まゐ)らせ/けり。\「汝(なんじ)/が\名/を/ば\何(なに)/と\言(い)ふ/ぞ」/と\御尋(おん-たづ)ね\有(あ)り/ける/に、\「辰(たつ)/の-年(とし)/の\辰(たつ)/の-日/の\辰(たつ)/の-時/に\生(うま)れ/て\候(さうら)ふ」/とて、\「名/を/ば\源太(ぐわんだ)/と\申(まう)し\候(さうら)ふ」/と\申(まう)し/けれ/ば、\無官(むくわん)/の\者(もの)/に\合戦(かつせん)/の\大将(たいしやう)\さする\例(れい)\なし/とて、\元服(げんぷく)=せ/させよ/とて、\後藤内(ごとうない)-範明(のりあきら)/を\差(さ)し-添(そ)へ/られ/て、\八幡宮(はちまんぐう)/に\元服(げんぷく)\させ/て、\八幡(はちまん)-太郎-義家(よしいへ)/と\号(かう)す。其(そ)/の-時(とき)\御門/より\賜(たま)はり/たる\鎧(よろひ)/を/こそ\源太(ぐわんだ)/が\産衣(うぶきぬ)/と\申(まう)し/けり。\秩父(ちちぶ/の)-十郎(じふらう)-重国(しげくに)\先陣(せんぢん)/を\賜(たま)はり/て、\奥州(あうしう)/へ\下る。\阿津賀志(あづかしゑ)/の=城(じやう)/を\攻(せ)め/ける/に、\猶(なほ)/も\源氏(げんじ)\打(う)ち-負(ま)け/て、\事(こと)

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\悪(あ)しかり/な/ん/とて、\急(いそ)ぎ\都/へ\早馬(はやむま)/を\立(た)て、\此(こ)/の\由(よし)/を\申(まう)し/けれ/ば、\年号(ねんがう)/が\悪(あ)しけれ/ば/とて、\康平(かうへい)-元年/に\改(あらた)め/られ、\同(おなじ)き=年=四月-二十一日\阿津賀志(あづかしゑ)/の=城(じやう)/を\追(お)ひ-落(おと)す。\しから/ざる/に\かかり/て\伊奈(いな)/の-関(せき)/を\攻(せ)め-越(こ)え/て、\最上郡(もがみ/の-こほり)/に\篭(こも)る。\源氏(げんじ)\続(つづ)い/て\攻(せ)め\給(たま)ひ/しか/ば、\雄勝(をかち)/の-中山(なかやま)/を\打(う)ち-越(こ)え/て、\仙北(せんぶく)-金沢(かなざは)/の=城(じやう)/に\引(ひ)き-篭(こも)り。\それ/にて\一両年(いちりやうねん)/を\送(おく)り-戦(たたか)ひ/つれ/ども、\鎌倉(かまくら/の)-権五郎(ごんごらう)-景政(かげまさ)、\三浦(みうら/の)-平大夫(へいだいふ)-為継(ためつぎ)、\大蔵(おほくら/の)-大夫(たいふ)-光任(みつたふ)、\是(これ)-等(ら)/が\命(いのち)/を\捨(す)て/て\攻(せ)め/ける\程(ほど)/に、\金沢(かなざは)/の-城(じやう)/を/も\落(おと)さ/れ/て、\白木山(しろきやま)/に\かかり/て、\衣川(ころもがは)/の-城(じやう)/に\篭(こも)る。\為継(ためつぎ)、\景政(かげまさ)\重(かさ)ね/て\攻(せ)め-かかる。\康平(かうへい)+三年(さんねん)-六月-二十一日/に\貞任(さだたふ)\大事(だいじ)/の\手(て)\負(お)ひ/て\梔子色(くちなしいろ)/の\衣(きぬ)/を\着(き)/て、\磐手(いはで)/の\野辺/に/ぞ\伏(ふ)し/に/ける。\弟(おとと)/の\宗任(むねたふ)/は\降人(かうじん)/と\なる。\境(さかひ)/の-冠者(くわんじや)、\後藤内(ごとうない)\生捕(いけどり)/に\し/て\やがて\斬(き)ら/れ/ぬ。\義家(よしいへ)\都(みやこ)/に\馳(は)せ-上(のぼ)り。\内裏(うち)/の\見参(げんざん)/に\入(い)れ/て、\末代(まつだい)/まで/の\名/を\あげ\給(たま)ふ。\其(そ)/の-時(とき)、\奥州(あうしう)/へ\御伴(おん-とも)\申(まう)し\候(さうら)ひ/し\三つう/の-少将(せうしやう)/に\十一代/の\末(すゑ)\淡海(たんかい)/の\後胤(こうゐん)、\藤原(ふぢはら/の)-清衡(きよひら)/と\申(まう)す\者(もの)\国(くに)/の\警護(けいご)/に\留(と)め/られ/て\候(さうら)ひ/ける/が、\亘理(わたり)/の-郡(こほり)/に\有(あ)り/けれ/ば、\亘理(わたり)/の-清衡(きよひら)/と\申(まう)し\候(さうら)ひ/し、\両国(りやうごく)/を\手/に\握(にぎ)つ/て\候(さうら)ひ/し、\十四道/の\弓取(ゆみとり)\五十万騎、\秀衡(ひでひら)/が\伺候(しこう)/の\郎等(らうどう)\十八万騎(じふはちまん-ぎ)\もち/て\候(さうら)ふ。\是(これ)/こそ\源平(げんぺい)/の=乱(らん)\出(い)で-来(きた)ら/ば、\御方人(おん-かたうど)/と/も\なり/ぬ/べき\者(もの)/にて\候(さうら)へ」/と\申(まう)し/ける。\

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遮那王殿(しやなわう-どの)\鞍馬出(くらまいで)/の\事(こと) S0107

\遮那王殿(しやなわう-どの)\是(これ)/を\聞(き)き\給(たま)ひ/て、\かねて\聞(き)き/し/に\少(すこ)し/も\違(たが)は/ず、\世/に\有(あ)る\者(もの)\ごさんなれ。\あはれ\下(くだ)ら/ばや。\左右(さう)-なく\頼(たの)ま/れ/たら/ば、\十八万騎(じふはちまん-ぎ)/の\勢(せい)/を\十万騎(じふまん-ぎ)/を/ば\国/に\とどめ、\八万騎(はちまん-ぎ)/を/ば\率(そつ)し/て、\坂東(ばんどう)/に\打(う)ち-出(い)で、\八ケ国(はつ-か-こく)/は\源氏(げんじ)/に\志(こころざし)\有(あ)る\国/なり。\下野殿(しもつけ-どの)/の\国/なり。\是(これ)/を\はじめ/と/して\十二万騎(じふにまん-ぎ)/を\催(もよほ)し/て\二十万騎(にじふまん-ぎ)/に\なつ/て、\十万騎(じふまん-ぎ)/を/ば\伊豆(いづ)/の\兵衛佐(ひやうゑ/の-すけ)-殿(どの)/に\奉(たてまつ)り、\十万騎(じふまん-ぎ)/を/ば\木曾-殿(どの)/に\つけ/て、\我(わ)/が-身/は\越後国(ゑちご/の-くに)/に\打(う)ち-越(こ)え、\鵜川(うかは)、\佐橋(さはし)、\金津(かなづ)、\奥山(おくやま)/の\勢(せい)/を\催(もよほ)し/て、\越中(ゑつちゆう)、\能登(のと)、\加賀(かが)、\越前(ゑちぜん)/の\軍兵(ぐんびやう)/を\靡(なび)け/て、\十万騎(じふまん-ぎ)/に\なり/て、\荒乳(あらち)/の-中山(なかやま)/を\馳(は)せ-越(こ)え/て、\西近江(にしあふみ)/に\かかり/て、\大津(おほつ)/の-浦(うら)/に\著(つ)き/て、\坂東(ばんどう)/の\二十万騎(にじふまん-ぎ)/を\待(まち)-得(え)/て、\逢坂(あふさか)/の-関(せき)/を\打(う)ち-越(こ)え/て、\都(みやこ)/に\攻(せ)め-上り、\十万騎(じふまん-ぎ)/を/ば\天下/の\御所/に\参(まゐ)らせ/て、\源氏(げんじ)\すごさ/ん\由(よし)/を\申(まう)さ/ん/に\平家(へいけ)\猶(なほ)/も\都/に\繁昌(はんじやう)=し/て\空(むな)しかる/べく/ば、\名/を/ば\後(のち)/の-世/に\とどめ、\屍(かばね)/を/ば\都(みやこ)/に\曝(さら)さ/ん\事(こと)\身/に\取(と)り/て/は\何(なに)/の\不足(ふそく)/か\有(あ)る/べき/と\思(おも)ひ-立(た)ち\給(たま)ふ/も\十六/の\盛(さかり)/に/は\恐(おそ)ろしく/ぞ\覚(おぼ)え/ける。\此(こ)/の\男奴(をとこ-め)/に\知(し)らせ/ばや/と\思(おぼ)し召(め)し/て\仰(おほ)せ/られ/ける/は、\「汝(なんぢ)/なれ/ば\知(し)らする/ぞ。\人/に\披露(ひろう)\有(あ)る/べから/ず。\我(われ)/こそ

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\左馬頭(さま/の-かみ)-義朝(よしとも)/が\子/にて\あれ、\秀衡(ひでひら)/が\もと/へ\文(ふみ)\一(ひと)つ\言伝(ことづて)/ばや。\何時(いつ)/の\頃(ころ)\返事(へんじ)/を\取(と)り/て\くれ/んずる/ぞ/と\仰(おほ)せ/られ/けれ/ば、\吉次(きちじ)\座敷(ざしき)/を\すべり-おり、\烏帽子(えぼし)/の\先(さき)/を\地/に\つけ/て\申(まう)し/ける/は、\「御事(おん-こと)/を/ば\秀衡(ひでひら)\以前(いぜん)/に\申(まう)さ/れ\候(さうら)ふ。\御文/より/も\只(ただ)\御下(おん-くだ)り\候(さうら)へ、\道(みち)/の\程(ほど)\御宿直(おん-とのゐ)\仕(つか)まつり\候(さうら)は/んずる」/と\申(まう)し/けれ/ば、\文/の\返(かへ)り事(ごと)\待(ま)た/ん/も\心(こころ)-もと-なし。\さら/ば\連(つ)れ/て\下(くだ)ら/ばや/と\思召(おぼしめ)し/ける。\「何時(いつ)+ごろ\下(くだ)り\候(さうら)は/んずる/ぞ」/と\宣(のたま)へ/ば、\「明日\吉日/にて\候(さうら)ふ\間(あひだ)、\形(かた)/の/如(ごと)く/の\門出(かどいで)\仕(つか)まつり\候(さうら)は/んずる」/と\申(まう)し/けれ/ば、\「さら/ば\粟田口(あはたぐち)\十禅師(じふぜんじ)/の\御前(お-まえ)/にて\待(ま)た/んずる/ぞ」/と\宣(のたま)ひ/けれ/ば、\吉次(きちじ)/は\「承(うけたまは)り\候(さうら)ふ」/とて\下向(げかう)=し/てんげり。\遮那王殿(しやなわう-どの)\別当(べつたう)/の\坊(ばう)/に\帰(かへ)り/て\心(こころ)/の\中(うち)/ばかり/に\出(い)で-立(た)ち\給(たま)ふ。\七歳(しちさい)/の\春/の\頃(ころ)/より\十六/の\今(いま)/に\至(いた)る/まで、\朝(あした)/に/は\けうくん/の\霧(きり)/を\払(はら)ひ、\夕(ゆうべ)/に/は\三光(さんくわう)/の\星(ほし)/を\いただき、\日夜\朝暮(てうぼ)/なれ/し\馴染(なじみ)/の\師匠(ししやう)/の\御名残(おん-なごり)/も\今(いま)/ばかり/と\思(おも)は/れ/けれ/ば、\しきり/に\忍(しの)ぶ/と\し\給(たま)へ/共(ども)、\涙(なみだ)/に\むせび\給(たま)ひ/けり。\され/ども\心(こころ)-弱(よわ)く/て/は\叶(かな)ふ/べき/に\あら/ざれ/ば、\承安(じようあん)+四年(しねん)-二月-二日/の\曙(あけぼの)/に\鞍馬(くらま)/を/ぞ\出(い)で\給(たま)ふ。\白(しろ)き\小袖(こそで)\一かさね/に\唐綾(からあや)/を\着(き)-かさね、\播磨浅葱(はりまあさぎ)/の\帷子(かたびら)/を\うへ/に\召(め)し、\白(しろ)き\大口(おほくち)/に\唐織物(からおりもの)/の=直垂(ひたたれ)\めし、\敷妙(しきたへ)/と\言(い)ふ\腹巻(はらまき)\着篭(きご)め/に/して、\紺地(こんぢ)/の=錦(にしき)/にて\柄鞘(つかさや)\包(つつ)み/たる\守刀(まぼりがたな)、\黄金作(こがねづくり)/の=太刀(たち)\帯(は)い/て、\薄化粧(うすげしやう)/に\眉(まゆ)\細(ほそ)く\つくり/て、\髪(かみ)\高(たか)く\結(ゆ)ひ-あげ、\心(こころ)-細(ぼそ)-げ/にて\壁(かべ)/を

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\隔(へだ)て/て\出(い)で-立(た)ち\給(たま)ふ/が、\我(われ)/なら/ぬ\人/の\訪(おとづ)れ/て\通(とほ)ら/ん\度(たび)/に\さる=者(もの)\是(これ)/に\有(あ)り/し/ぞ/と\思(おも)ひ-出(い)で/て、\あと/を/も\弔(とぶら)へ/かし/と\思(おも)は/れ/けれ/ば、\漢竹(かんちく)/の\横笛(やうでう)\取(と)り-出(い)だし、\半時(はんじ)/ばかり\吹(ふ)き/て、\音(ね)/を/だに\あと/の\形見(かたみ)/とて、\泣(な)く泣(な)く\鞍馬(くらま)/を\出(い)で\給(たま)ひ、\其(そ)/の=夜/は\四条(しでう)/の=聖門(しやうもん)-坊(ばう)/の\宿(やど)/へ\出(い)で/させ\給(たま)ひ/て、\奥州(あうしう)/へ\下(くだ)る\由(よし)\仰(おほ)せ/られ/けれ/ば、\善悪(ぜんあく)\御伴(おん-とも)\申(まう)し\候(さうら)は/ん/と\出(い)で-立(た)ち/けり。\遮那王殿(しやなわう-どの)\宣(のたま)ひ/ける/は、\「御辺(ごへん)/は\都(みやこ)/に\とどまり/て、\平家(へいけ)/の\なり-行(ゆ)く\様(さま)/を\見(み)/て\知(し)らせよ」/とて、\京(きやう)/に/ぞ\とどめ/られ/ける。\さて\遮那王殿(しやなわう-どの)\粟田口(あはたぐち)/まで\出(い)で\給(たま)ふ。\聖門(しやうもん)-坊(ばう)/も\それ/まで\送(おく)り\奉(たてまつ)り、\十禅師(じふぜんじ)/の\御前(お-まへ)/にて、\吉次(きちじ)/を\待(ま)ち\給(たま)へ/ば、\吉次(きちじ)\未(いま)だ\夜深(よぶか)/に\京(きやう)/を\出(い)で、\粟田口(あはたぐち)/に\出(い)で-来(きた)る。\種々(しゆじゆ)/の\宝(たから)/を\二十-余疋(よひき)/の\馬(うま)/に\負(おほ)せ/て\先(さき)/に\立(た)て、\我(わ)/が-身/は\京(きやう)/を\尋常(じんじやう)/に/ぞ\出(い)で-立(た)ち/ける。\間々(あひあひ)\引柿(ひきがき)=し/たる\摺尽(すりづく)し/の=直垂(ひたたれ)/に\秋毛(あきげ)

P055

/の\行縢(むかばき)\はい/て、\黒栗毛(くろくりげ)/なる\馬(うま)/に\角覆輪(つのぶくりん)/の\鞍(くら)\置(お)い/て/ぞ\乗(の)り/たり/ける。\児(ちご)\乗(の)せ\奉(たてまつ)ら/ん/とて、\月毛(つきげ)/なる\馬(うま)/に\沃懸地(いかけぢ)/の\鞍(くら)\置(お)き/て、\大斑(おほまだら)/の\行縢(むかばき)、\鞍覆(くらおほひ)/に/して/ぞ\出(い)で-来(きた)る。\遮那王殿(しやなわう-どの)\「如何(いか)/に、\約束(やくそく)=せ/ばや」/と\宣(のたま)へ/ば、\馬(うま)/より\急(いそ)ぎ\飛(と)ん/で\下(お)り、\馬(うま)\引(ひ)き-寄(よ)せ\乗(の)せ\奉(たてまつ)り、\かかる\縁(えん)/に\会(あ)ひ/ける/よ/と\世/に\嬉(うれ)しく/ぞ\思(おも)ひ/ける。\吉次(きちじ)/を\招(まね)き/て\宣(のたま)ひ/ける/は、\「や、\殿(との)、\馬(うま)/の\腹筋(はらすぢ)\馳(は)せ-切(き)つ/て、\雑人(ざふにん)-奴(め)-等(ら)/が\追(お)ひ-着(つ)か/ん。\かへりみる/に\駆足(かけあし)/に\なり/て\下(くだ)ら/ん/と\覚(おぼ)ゆる/なり。\鞍馬(くらま)/に\なし/と\言(い)は/ば、\都/に\尋(たづ)ぬ/べし。\都(みやこ)/に\なし/と\言(い)は/ば、\大衆(だいしゆ)-共(ども)\定(さだ)めて\東海道(とうかいだう)/へ/ぞ\下(くだ)ら/んず/らん/とて、\摺針山(すりばりやま)/より\こなた/にて\追(おつ)-掛(か)け/られ/て、\帰(かへ)れ/と\言(い)は/んずる\者(もの)/なり。\帰(かへ)ら/ざら/ん/は\仁(じん)=義(ぎ)=礼(れい)=智(ち)/に/も\はづれ/なん。\都(みやこ)/は\敵(てき)/の\辺(へん)/也(なり)。\足柄山(あしがらやま)/を\越(こ)え/ん/まで/こそ\大事(だいじ)/なれ。\坂東(ばんどう)/と\言(い)ふ/は\源氏(げんじ)/に\志(こころざし)/の\有(あ)る\国(くに)/なり、\言葉(ことば)/の\末(すゑ)/を\以(もつ)て、\宿々(しゆくじゆく)/の\馬(うま)\取(と)り/て\下(くだ)る/べし、\白川(しらかは)/の-関(せき)/を/だに/も\越(こ)え/ば、\秀衡(ひでひら)/が\知行(ちぎやう)/の\所(ところ)/なれ/ば、\雨/の\ふる/やらん、\風/の\ふく/やらん/も\知(し)る/まじき/ぞ」/と\宣(のたま)へ/ば\吉次(きちじ)\是(これ)/を\聞(き)き/て\かかる\恐(おそ)ろしき\事(こと)\あら/じ。\毛(け)/の\なだらか/なら/ん\馬(うま)\一匹(いつぴき)/を/だに/も\乗(の)り\給(たま)は/ず/して、\恥(はぢ)\有(あ)る\郎等/の\一騎/を/だに/も\具(ぐ)し\給(たま)は/で、\現在(げんざい)/の\敵(かたき)/の\知行(ちぎやう)=する\国/の\馬(うま)/を\取(と)り/て\下(くだ)ら/ん/と\宣(のたま)ふ/こそ\恐(おそ)ろしけれ/と/ぞ\思(おも)ひ/ける。\され/ども\命(めい)/に\従(したが)ひ、\駒(こま)/を\早(はや)め/て\下(くだ)る\程(ほど)/に\松坂(まつざか)/を/も\越(こ)え/て、\四(し)/の-宮(みや)河原(かはら)/を\見(み)/て\過(す)ぎ、\逢坂(あふさか)/の-関(せき)\打(う)ち-越(こ)え/て\大津(おほつ)/の-浜(はま)

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/を/も\通(とほ)り/つつ\瀬田(せた)/の\唐橋(からはし)\打(う)ち-渡(わた)り、\鏡(かがみ)/の-宿(しゆく)/に\著(つ)き\給(たま)ふ。\長者(ちやうじや)/は\吉次(きちじ)/が\年(とし)-頃(ごろ)/の\知る\人/なり/けれ/ば、\女房(にようばう)\数多(あまた)\出(い)だし/つつ\色々(いろいろ)/に/こそ\もてなし/けれ。\

義経記巻第一(だいいち)

P057\

 

巻2以降 後日

 

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